【井上英夫 先生 レジュメ】 共生社会と人権 ―人間の尊厳・自己決定と住み続ける権利− 2018/3/17 井上英夫 はじめに 1 生命が軽くなっている 2 共生社会−ともに創り、ともに生きる 一 相模原障害者殺傷事件をどう捉えるか―人権・生命権・住み続ける権利の侵害・剥奪として 1 優生思想・劣等処遇意識―マグマは噴出した―思想・哲学の貧困 2 貧困・差別の拡大・深化―孤独死・孤立死、介護・病苦殺人 3 政策・制度、思想・哲学の貧困−社会保障制度改革推進法(自助・共助・公助)⇒無責任体制 保障から支援へ−無責任体制 4 やまゆり園と家族・地域生活 二 人権保障の意義 1 人権とは何か−生きる基本の保障 2 人権の本質 @ 権利のための闘い―憲法97条:「人類の多年にわたる自由獲得の努力(Struggle)の成果」 A 国民の義務:憲法12条:人権保持のための「不断の努力(Endeavor)」 3 人権の歴史 @自由権→社会権・生存権→21世紀総合的・包括的権利 A人権としての社会保障・生活保護−恩恵→権利(契約・法律)→人権 B21世紀の人権−住み続ける権利 4 人権の理念としての人間の尊厳 価値において平等・唯一無二の存在 5 自己決定・選択の自由、平等の原理 参加 6 原則−2006年:障害をもつ人の権利条約、1991年:国連高齢者原則 7 人権保障の意義 @国民の権利・国の保障義務 憲法25条→義務と権利の切断 A人権保障の体系−憲法→条約→法律・条例→通達 B人権保障の組織としての国・自治体−人権保障のにない手としての立法府:行政府:司法府 C裁判を受ける権利と違憲立法審査権 三 ノーマライゼーション・インクルージョン、共生社会論・「障害者福祉政策」の問題点 1 ノーマライゼ−ションは「普通化」ではない。人権保障である 2 「自己決定」の危険性−尊厳死、自助・共助 3 強制社会にならないために−ともに創り、ともに生きる @ 「自立」か、独立(Independent Living)か A 自己決定と参加→政治参加、行政参加、司法参加、社会参加 4 人権と呼称−いつまで「障害(がい)者」か @ 匿名問題―奪われた生命・名前 A 障害者(Disabled Person―1981年:国際障害者年)⇒障害のある人・もつ人(Person with Disabilities―2006年:障害のある人の権利条約)⇒固有のニーズをもつ人(Person with Specific Needs)→普遍的人権(Universal Human Rights)と固有の人権(Specific Human Rights) B等級をつけるな。 C弱者と強者 健常者と障害者 5 「弱くてもろい社会」→貧しい社会(Impoverished society)=自助・共助・公助 @親亡き後が心配=家族共倒れ社会・寄食社会 A営利化政策→貧困ビジネス、 6 人間の尊厳:いのち・人間の価値の平等の否定→他の人と同等の権利の保障 四 憲法・人権をゆたかに−住み続ける権利と独立生活保障 1 誰の人権が侵害されているか―利用者、家族、ケア労働者・行政職員、住民 2 どのような人権が侵害・剥奪されているのか―生命権、生存権、生活権、健康権、社会保障・社会福祉の権利、住み続ける権利・居住移転の自由(憲法22条)⇒自己決定権(憲法13条) 3 どのような権利が保障されているのか−住み続ける権利の意義と構造 4 国際条約で憲法をゆたかに−障害のある人の権利条約 @第10条 Right to life生命に対する権利 A第17条Protecting the integrity of the person個人をそのままの状態で保護すること B第19条 Living independently and being included in the community自立した生活及び地域社会への包容 「障害をもつ人が、他の者との平等を基礎として、居住地を選択し、及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること並びに特定の生活施設で生活する義務を負わないこと。」 五 「障害者」政策をより豊かに―北欧に学ぶ人権、社会保障・社会福祉=ノ−マライゼ−ション・インクル−ジョン 1 大部屋⇒個室⇒家の保障へ GHや集合住宅=別の家大型コロニ―⇒小さいことは良いことだ 2 地域生活とは何か−労働・雇用とアクティビティの保障 3 参加の意味 ALS患者と政治参加 4 利用者の人権、家族の人権 それぞれ自己決定に基づき、それぞれの人生を生きる 5 使用者と労働者 デンマーク国民高等学校 6 自己決定と住み続ける権利 7 重度の人はいない⇒自傷他害 8 民営化・委託の意味−人権のにない手を育てる 9 専門職と共働―民主主義 10 障害者⇒障害のある人⇒固有のニーズのある人 等級をつけるな、人間である 11 被害者の人権・加害者の人権―死刑制度を考える おわりに 1 ハンセン病患者、元患者、回復者の100年のたたかいに学ぶ―人権意識の向上 @ 人権回復への道 1996年:らい予防法廃止⇒2001年:熊本地裁判決、立法、行政府謝罪⇒2016年:最高裁・司法府謝罪⇒裁判官人権教育 A 主権者教育と人権教育・学習 B 偏見と差別は同じか 2 頑張らなくて良い社会を創る 参考文献 *「『固有のニーズ』をもつ人と人権保障」障害者問題研究、04年2月 *「障害をもつ人と人権」障害者問題研究45巻3号、2017年 *『住み続ける権利−貧困・震災をこえて』新日本出版、12年 *福祉国家と基本法研究会、井上英夫、後藤道夫、渡辺治編『新たな福祉国家を展望する―社会保障基本法・社会保障憲章の提言』旬報社、11年 *「はじめに−軽くなった生命」全国「餓死」「孤立死」問題調査団編『「餓死・孤立死」の頻発を見よ−生活保護バッシングで隠された真実』あけび書房、12年 *井上英夫・山口一秀・荒井新二編『なぜ母親は娘を手にかけたのか』旬報社、16年 *藤井克徳・池上洋通・石川 満・井上英夫編『生きたかった−相模原障害者殺傷事件が問いかけるもの』大月書店、16年 *「ハンセン病問題は終わっていないー菊池事件再審請求が意味するもの」ゆたかなくらし、2017年8月号 *「ハンセン病問題と法学界の責任−『特別法廷』問題を中心に」法と民主主義、2017年1月号 *井上英夫・藤原精吾・鈴木勉・井上義治・井口克郎編『社会保障レボリューション−いのちの砦・社会保障裁判』高菅出版、2017年 資料1 主要国際条約と国際年 2006年 障害のある人の権利条約○ 2004年 奴隷制との闘争とその廃止を記念する国際年 2003年〜2012年 第2回アジア太平洋障害者の10年 2002年 拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約の選択議定書× 2001年 人種主義、人種差別、排外主義、不寛容に反対する動員の国際年 2001年 ボランティア国際年 2000年 武力紛争における児童の関与に関する児童の権利に関する条約の選択議定書○ 2000年 児童売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書○ 1999年 国際高齢者年 1999年 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書× 1996年 貧困撲滅のための国際年 1995年 国連寛容年 1994年 国際家族年 1993年 世界の先住民の国際年 1993年〜2002年 アジア太平洋障害者の10年 1993年 障害のある人の機会均等化に関する基準規則 1990年 国際識字年 1990年 すべての移住労働者及びその家族の権利の保護に関する条約× 1989年 児童の権利に関する条約○ 1989年 市民的及び政治的権利に関する国際規約の第2選択議定書(死刑廃止)× 1987年 家のない人々のための国際居住年 1986年 国際平和年 1985年 国際青少年年 1984年 拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約○ 1983~1992年 国連障害者の10年 1983年 世界コミュニケーション年 1982年 南アフリカ制裁国際年 1982年 「障害者に関する世界行動計画」 1981年 国際障害者年 1979年 国際児童年 1979年 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約○ 1978/79年 国際反アパルトヘイト年 1975年 国際婦人年 1975年 障害者の権利に関する宣言 1971年 精神遅滞者の権利に関する宣言 1971年 人種差別と闘う国際年 1970年 国際教育年 1968年 国際人権年 1966年 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約○ 1966年 市民的及び政治的権利に関する国際規約○ 市民的及び政治的権利に関する国際規約の選択議定書× 1965年 あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約○ 1959/60年 世界難民年 1948年 世界人権宣言 1945年 国連憲章 *国連広報センターホームページ(http://www.unic.or.jp/schedule/futur3.htm)等から作成 ○は日本批准 ×は日本未批准 資料2 高齢者のための国連原則 −人生を刻む年月に活力を加えるために− 総会は、 高齢者が、社会に貢献していることを評価し、 国連憲章において、加盟国の人々が、とくに基本的人権と人間の尊厳および価値と男女および大小各国の同権とに関する信念をあらためて確認し、一層大きな自由の中で社会的進歩と生活水準の向上とを促進する決意を宣言したことを認識し、 世界人権宣言と経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約ならびに市民的及び政治的権利に関する国際規約と特定の集団に対する普遍的基準の適用を確保するその他の宣言における諸権利の詳細な規定に留意し、 高齢化に関する世界会議において採択され、一九八二年一二月三日の三七/五一決議において総会によって支持された高齢化に関する国際行動計画に従って、 国家間だけでなく国内そして個人の間において、高齢者の状況に多様な政策的対応を要する非常に大きな違いがあることを認め、 すべての国でこれまでにないほど多数の人がよい健康状態で高齢期を迎えていることを意識し、 科学的研究によって、高齢に伴う不可避で不可逆的な減退に関する多くの固定観念が誤っていることが証明されていることを承知し、 高齢者数およびその割合の増加によって特徴づけられている世界において、意欲と能力のある高齢者に社会の進行中の活動に参加し貢献する機会が用意されなければならないことを確信し、 先進国および途上国における家庭生活への重い負担が、虚弱な高齢者に対してケアをしている者への援助を求めていることに注意し、 高齢化に関する国際行動計画や国際労働機関、世界保健機関および他の国連機関の条約、勧告、決議によってすでに設定された基準を想起し、 以下の原則を国の計画に可能な限り取り入れるよう各国政府に奨励する。 独立(Independence) 1高齢者は、所得の保障と家族および地域社会の支援と自助を通じて十分な食糧、水、住居、衣類、健康へのケアが得られなければならない。 2高齢者は、働く機会または他の所得を得る機会をもつべきである。 3高齢者は、職場から引退する時期と退職するペースの決定に参加できなければならない。 4高齢者は、適切な教育・訓練計画を利用できなければならない。 5高齢者は、安全でかつ個人の選択や変化する能力に適合する環境において生活できなけ ればならない。 6高齢者は、できるだけ長い間、自宅に住むことができなければならない。 参加(Participation) 7高齢者は、社会との結びつきを維持すべきであり、高齢者の福祉に直接関係する政策の立案および実施に積極的に参加すべきである。また、高齢者の知識や技能を若い世代 と共有すべきである。 8高齢者は、地域社会に役立つ機会を見つけ、広げることができるべきであり、高齢者の関心や能力にふさわしいボランティアとして役立つことができなければならない。 9高齢者は、高齢者の運動あるいは団体をつくることができなければならない。 ケア(Care) 10高齢者は、文化的価値に関する各社会の制度にしたがって、家族や地域社会のケアと保護から利益を得られなければならない。 11高齢者は、身体的、精神的および情緒的に最高水準の状態を維持しまたはその状態を回復し、発病を予防しまたは遅らせるように高齢者を援助する健康へのケアを受けられな ければならない。 12高齢者は、自主性、保護およびケアを増進する社会や法律によるサービスを受けられなければならない。 13高齢者は、思いやりがあり、不安のない環境において、保護やリハビリテーションや社会的・精神的刺激を提供する適切な水準の施設ケアを利用できなければならない。 14高齢者は、ケア施設や治療施設等いかなる所に住もうと、その尊厳と信念とニ−ズとプライバシ−、そして自分の受けるケアと生活の質について決定する権利を最大限尊重さ れることを含む人権と基本的自由を享受できなければならない。 自己実現(Self-fulfilment) 15高齢者は、自分の可能性を最大限伸ばすことのできる機会を追求することができなければならない。 16高齢者は、社会の教育的、文化的、精神的そしてレクリエ−ションに関する資源を利用できなければならない。 尊厳(Dignity) 17高齢者は、搾取ならびに身体的あるいは精神的虐待を受けることなく、尊厳を保ち安心して生活できなければならない。 18高齢者は、年齢や性別、人種的または民族的背景や障害またはその他の地位にかかわらず公正に扱われ、高齢者の経済的寄与とは関係なく評価されるべきである。 (1991年12月16日第74回全体会合 46/91決議付録 井上英夫訳) 資料3 日本国憲法 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法はかかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。 第一章 天皇 第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。 第二章 戦争の放棄 第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。 第三章 国民の権利及び義務 第十条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。 第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。 第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。 第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。 第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。 2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。 3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受けるものの一代に限り、その効力を有する。 第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。 2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。 3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。 4 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。 第十六条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。 第十七条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。 第十八条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。 第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。 第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。 2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。 3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。 第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。 2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。 第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。 2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。 第二十三条 学問の自由は、これを保障する。 第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。 2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない。 第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。 第二十六条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。 2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。 第二十七条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。 2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。 3 児童は、これを酷使してはならない。 第二十八条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。 第二十九条 財産権は、これを侵してはならない。 2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。 3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。 第三十条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。 第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。 第三十二条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。 第九章 改正 第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。 2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。 第十章 最高法規 第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。 第九十八条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。 2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。 第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。